3D月写真の元祖に出会う

9/30の月面北東部のアップ。

画面上部にある、浅くて広いクレーターに注目。
このクレーターの名称はDe la Rue。

これは19世紀に活躍した、アマチュア天文家で天体撮影のパイオニアであった、ウォーレン・デラルーではないかと思われます。

Wikiにはこういう記述があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%BC

ここには記述がありませんが、この人こそ、世界で初めて月の立体撮影に成功した人です。
美星町 星のデータベース
http://www.bao.go.jp/stardb/dat/jinmei/dat_j_te_02.html

…と言うことで、私の撮影している月の3D画像の元祖の人なのです。
当時の3D撮影は月の全面写真で、秤動を利用して視差を獲得し、月が球体に見える写真のセットを作り、ステレオスコープで見て楽しんだものだったようです。1900年前後のアンティークのステレオ写真にも、月の全体像を立体視して、月が球体に見えるものが市販されていました。

この写真は、おもに地球の自転を利用して基線を得て、立体化しています。
拡大撮影なら、それほど大きな視差は要らないので、この手法が楽です。
カラス乾板時代に月の立体写真を作った人を想いながら、その名を残すクレーターをデジタルで立体視するのも、また一興かと思います。

それにしても、銀塩時代には月のステレオ写真を作るのは、とても大変だったと思います。私も以前、銀塩の時代に挑戦してみたことがありますが、まず、左右を同じ調子に焼き上げるのが大変。そして、それを切って位置合わせをして、ステレオスコープに合わせて……1枚作るのに数日かかりました。

今は撮影後1時間以内に完成します。
19世紀のアイデアが、デジタル時代だからこその写真表現手法として、蘇った……と言ったら、大袈裟かな。

ともあれ、月の端っこのほうとは言え、「ステレオ月写真の父」を、今のステレオ写真の手法で眺めてみるのも、感慨深いものがあります。

画像は例によってアナグリフです。
赤青メガネで立体視してください。