月写真の画像処理

今日は2Dのお話。

月の全体像の撮影は,初心者でも比較的簡単にできます。
超望遠ズームがあれば,けっこう細部まで写ります。

でも,月写真は奥が深い。

意外と難しいのが,露出時間の設定。
月の欠け際の部分に合わせると,光がたっぷり当たっているハイライト部が露出オーバー。ハイライト部に合わせると,欠け際のクレーターがアンダー。

これを解決するために,「おおい焼き」の技法を使う人もいますが,私は自家製のアンシャープマスクを作り,手作業で画像処理しています。

まず,露出を何段階か変えて,元画像を撮影しておきます。
その中から,欠け際に露出が合っていて,ハイライト部のピクセルが飽和しない程度の画像と,明るい部分に露出の合っている画像を選びます。

これが,欠け際に露出を合わせた画像。
元画像を縮小しているだけなので,気流が荒くて,ちょっとシャープさにも欠けます。

こちらは明るい部分に露出が合っている画像。
両者の差は2〜3EVぐらいあります,

この2枚を用い,自家製アンシャープマスク処理をします。

明るいところの露出が合っているほうの画像に,ガウスぼかしを少々かけて,欠け際に露出が合っている画像と合わせ,減算合成します。
減産率は30〜50%ぐらい。
減算用の画像は,減算する前に,少しトーンカーブをいじってもOK。

これにより,ラチチュードを圧縮して,ハイライト部と欠け際を同時に表現できるようにします。

減算率は不自然にならない程度にします。減算し過ぎると欠け際のほうが明るくなってしまいます。

合成が済んだら,画像を統合し,必要に応じてトーンカーブを調整したり,輪郭を強調したり。フォトレタッチソフトのアンシャープマスクでシャープさを補う場合もあります。

完成品がこちら。640×480ピクセルに縮小していますが,どんなふうに改善したのか,雰囲気は分かると思います。

地球の自転を利用して視差を得る場合,2,3時間隔てて撮影した元画像に,上記のような処理を施して2枚用意し,これを3D画像に合成してゆきます。

やはり,元画像がシャープだと,3Dにしたときの臨場感が違います。


この画像処理の主目的は,ラチチュードの圧縮ですが,特に気流の悪い季節には,解像度を救済するのにも,そこそこ役に立ちます。

最近は動画で撮って,多数の画像を1枚にスタックして(=コンポジット処理),それをモザイク合成する人もいますが,月の全面撮影で,しかも,時間差を使って視差を得る作業をしているので,左右のチャンネルそれぞれに,1枚撮りで短時間のうちに撮影しないと,地球はどんどん回転してしまいますから,3Dの元画像としては,こんな撮影法&画像処理になっているのです。

もちろん,3Dに加工しなくても,けっこう使えるテクニックだと思います。