月の撮影は,そんなに難しくない

昨夜は下弦の月
かつ,しし座流星群の極大日。

この条件だと,肝心の,輻射点のあるしし座付近に月があります。
流星観測にとっては,大迷惑な観測条件。

まぁ,月の撮影にはあまり関係しませんが……子供の頃,初めて見た流星群がしし群で,そのときもしし座の近くに月があったのを思い出したのでした。


さて,月の3D画像を上映していると,「すごいねー」と言われることも少なくありません。
しかし,月の撮影は,天体写真としては,難しいほうではありません。
「そこそこのレベル」に達するのは簡単です。
……その道を極めようとすれば,非常に奥深い撮影対象ですけどね。

「そこそこに見て楽しいレベル」で月を撮影する方法論について触れます。


月のクレーターは,大きいものなら直径100〜200km。
これは焦点距離200mmぐらいの望遠をつけた35mm判カメラで写ります。
星見に使う,倍率6〜8倍程度の双眼鏡で,主要なクレーターが見えます。
意外と難易度が高くないのです。

月は,レンズの焦点距離の約1/110のサイズに結像します。
500mm望遠を使えば,ほぼ5mmの像が得られる。
撮像素子の小さい,最近のミラーレス一眼なら,簡単に月の全体像が撮れます。

また,夕景の中に浮かぶ三日月などを狙うなら,コンパクトデジカメの手持ち撮影でも,写すことができます。もちろん,カラー調整や露出補正,ピント出しは必要ですけど。

満月の露出時間は,昼間の地上の風景と同じくらい。
400mmぐらいまでの明るい望遠レンズなら,手持ちで何とか撮影できますが,本気で撮るなら,三脚が必要。

月を画面一杯に写したいなら,どうしても望遠鏡の力が欲しくなります。
35mm判なら焦点距離2000mmぐらい,APS-Cなら,焦点距離1200mmぐらい,マイクロフォーサーズなら焦点距離1000mmぐらいの望遠鏡の主焦点に,レンズを外したカメラボディをアダプタで取りつけて撮影すれば,望遠鏡が超望遠レンズになってくれます。


3D MOON PROJECTで紹介している,月の全面写真の多くは,ビクセンの15cm反射望遠鏡の直焦点で撮影しています。(この望遠鏡は既に廃番ですが…)
望遠鏡の焦点距離が750mmで,組み合わせるカメラがマイクロフォーサーズのボディですから,35mm判換算で1500mm相当の望遠撮影となります。画角的には,月がやや小さいのですが,3Dに加工する過程で,トリミングや縮小が必要なので,気にしません。カメラは12メガピクセルなので,ほぼ3000×4000ピクセル,一方,3D MOON PROJECTのデフォルトは1200×1600ピクセルで仕上げていますから,余裕です。撮影された満月の直径は1600ピクセルを超えています。

しかも,この望遠鏡なら,口径比はF5。条件が良ければ,シャッター速度1/1000秒で切れます。

あとはピント位置を丁寧に追い込んで,露出を5,6段階変えて撮影しておきます。

天体写真の「お約束」として,天球の東西方向を水平にした構図を取ります。
方角を見やすくする目的がありますが,この構図は,日周運動を利用した3D画像を作成する際の基準線にもなります。構図をキチンと合わせておくと,後の作業が楽です。

満月の立体画像は,それほど解像度が高くなくても良いので,比較的取り組みやすく,完成したときの感動が大きいものです。こう言うものこそ,アマチュアの手で取り組んで行ければ,と思います。大きな望遠鏡も要らないし,職人技的な技術も要求されないし,まして,プロが扱う領域ではありませんから,月の全面撮影は,手軽に取り組めると思います。

クレーターの拡大撮影になると,さらなる望遠が必要で,もっと難しくなりますが,各自の力量とか撮影システムの選択,撮影条件の調整など,いろいろ工夫の余地があります。もっとも,3D MOON PROJECTでは,あえて,超絶的な解像度を必要としていないので,そこそこに見栄えがする写真が撮れれば良いのですが……拡大撮影の話は,長くなりますので,今日は割愛します。


もうひとつの,月の3D撮影方法。
それは,地上の景色を取り入れ,地上の景色よりも遠くに月が見える立体画像を作ること。
この場合は,ほぼ風景写真の技法で済みます。
但し,地上の風景を立体視するために,数mの基線のある2枚の写真を要求します。
夕焼けの中の三日月など,地上の風景を取り入れながら,数歩だけ平行移動して2枚撮影して,3Dに加工します。この方法だと,月が日周運動で少しずれたり,雲が風で流れたりしますので,てきぱきと撮影し,3D加工の際,微妙なところは適当に修正します。
もちろん,同じカメラ2台で同時撮影すれば,きっちり写せますが,友達同士で同じカメラを持っていれば,楽しく撮影出来そうです。1人で2台買うのは,ちょっと……


「母屋」のギャラリーでは,こうした作例や,星空をバックに地上の風景が手前い見える3D画像などを紹介しています。
赤青のアナグリフ用3Dメガネが必要ですが,ぜひ,3Dのリアルの宇宙感を,試してみてください。

http://www.asahi-net.or.jp/~EP3N-KIZM/moon3d/gallery.htm