3D星景写真を作る

このブログでもたびたび登場している「3D星景写真」。

本格的にやるなら,同じカメラを2台用意して,地上の景色に視差が得られるように,数メートル左右に離して同じ方向を向けてセットし,同じ撮影条件,同じ露出時刻で同時撮影して,それを編集すれば,理屈の上では可能ですが,同じカメラを2台揃えて同じ撮影条件で同じ時刻にシャッターを切るのは,ちょっと大変です。
まして,「比較(明)合成」をする場合,元画像の数は膨大になります。

私はもっと簡易的に,カメラ1台で夜景を3Dにして星空の前に持ってくる撮影,画像処理法を行っています。

私の方法を紹介しましょう。

星空は2Dで撮っています。事実上無限遠にある対象ですから。
便宜的に,「比較(明)合成」で星空を写した写真を左チャンネルにしています。

まず,普通に星景写真を撮影します。
これは約40枚を「比較(明)合成」で1枚にまとめています。

「比較(明)合成」の手法については,多くの場所で紹介されているので,それを参照してください。

この画像を一旦,無圧縮または可逆圧縮で保存しておきます。
これを左チャンネル用の画像にします。

左チャンネルの撮影に引き続き,2〜6mぐらい右に平行移動し,同じアングルで右チャンネル分の画像を撮影します。撮影条件は左チャンネルと同じ条件ですが,こちらは景色だけが欲しいので,数枚連続撮影しておいて,こちらも「比較(明)合成」で1枚にまとめます。
撮影枚数は1枚でも良い場合もありますが,夜景も結構動いていて,信号や車のライトなどを平均化したほうが良い場合が多いので,数枚撮影しています。

次に,右チャンネル用の画像から星を消します。
星の近くの空をコピー&ペーストして,1つ1つ,丹念に。
暗い星はほったらかしても構いません。
そして,夜空の部分にガウスぼかしを掛けて,空のグラデーションをなめらかにしておきます。


ここからはアナグリフ合成作業。

左チャンネルの画像を,アナグリフ用に赤くします。
このとき,星は3D化しないので,そのままにしておきたい。
そこで,まず,景色を黒くつぶした,星だけの画像を作ります。

同じ元画像から,青と緑を消し,赤のみの画像を作り,その上に,さきほど作った星だけの画像を「比較(明)合成」で合わせます。

景色だけが赤い,左チャンネル用の画像が完成しました。

右チャンネル用の画像は,さきほどの,星を消した画像から,赤を抜き,緑+青(=シアン)画像にします。

この画像を,左チャンネルの画像に「比較(明)合成」で合わせ,景色がバックよりも手前に出るように位置合わせをします。
画像の左右の傾きを修整し,左チャンネルの赤い像が右チャンネルよりも右にズレた位置に持って行くと,夜景が手前に見えてきますので,赤青メガネで確認しながら,違和感の無い立体感を作ってゆきます。

そして,少々トリミングし(3D画像を作るときに,どうしても画像の左右端にズレが出てしまうのです),トーンカーブをいじって星空と夜景のバランスを整えて,完成です。

この画像は赤青メガネでごらんください。

地上の夜景が星空よりも手前に見えていると思います。

大きいスクリーンに投影する場合は,左右の画像のズレを,あまり大きく取らないほうが,目が疲れにくいと思います。

大きく投影すると,実際に星を眺めているような臨場感があります。

但し,この技法では,INFITECのような波長分割式の3D上映システムや,偏光で3Dを見せる場合は,右チャンネルにも左と同じ星空を入れる必要があります。
アナグリフ立体視をすることを想定して画像を作っているのだから,当然と言えば当然ですが……


ここに紹介した方法は,あくまでも1つの方法でしかありません。
これをヒントに,いろいろな手法を考えてみてください。
もし,もっと良い方法が見つかったら,ぜひ,教えてください。