星も景色も止まって欲しい

星景写真では,通常,固定撮影。
地上の景色は動かず,星は日周運動で動く。
それを利用して星の軌跡を描かせたりするわけですが,星も点像に収めて,地上の景色もブレない写真が欲しくなる時があります。

星を点像にしたいなら,赤道儀にカメラを乗せて,ガイド撮影してやれば良いのですが,この撮影法だと,地上の景色が流れてゆく。

その妥協点として,たとえばビクセンのポラリエでは,赤道儀を恒星時の半分の速度で動かすことが出来て,広角レンズで1分ぐらいの露出なら,星の動きも地上の景色の流れも,そんなに目立たない,と言う線を狙っているわけです。

でも,我が家の近所のそれは,明るめの広角レンズで1分も露出したら,空が真っ白になってしまう。
基本,星が見える程度にバックの明るさを抑えてコマ撮りし,1枚1枚カブリ補正をして加算合成し,1枚のガイド撮影画像を作っています。


その手間を掛けるのなら,星も景色も動かないで写る星景写真が作れるんじゃないか,と思い立ち,


作例が,これ。


中央にうお座,左におひつじ座。
写っている星の中で,いちばん明るいのは2等星。
地味な星の多い領域ですが,原版では7等星ぐらいは写っています。

これは,15秒露出×4回のガイド撮影を1枚にまとめています。
1枚目はそのまま。
露出15秒なら,景色も流れない。
2枚目以降は,同じ原版から,星の光を消しただけのダーク画像を作り,元画像に減算合成してやることで,星の光以外の情報を全て消しました。
もちろん空のカブリも地上の灯火も消えています。
これを1枚目の写真に加算合成すると,星の光だけが加算されます。
同様に,3枚目3枚目の画像も,星だけの情報にして加算。

星の光の蓄積量は,15秒固定露出の時の,約4倍。
バックの空の明るさや地上の風景は,15秒露出の1枚撮りと同じ。

そして最終的に,1分間のガイド撮影と地上の景色の固定撮影が共存する写真が出来上がりました。
撮影時の空は,肉眼で3〜4等星がやっと見える程度でしたが,7等星まで写し出しました。

さらに,横移動して地上の景色を同じ露出条件で1枚撮って,景色を3D化し,その風景の奥に星が光るように仕上げています。

アナグリフ画像にしています。
実際に星空を見上げているときの感覚に近い見え方に,さらに近づいた感じ。